リブ組翼でSALしてみよう

SAL(Side−Arm−Launch)は、従来の様に胴体を持って投げるのではなく、
主翼の端を持ち、遠心力を利用して機体を投げ上げる方法です。
このランチ方法では遠心力利用するために比較的弱い力で機体を投げ上げる事
が出来る反面、主翼にある程度の細工をしなくてはならず、このための重量や
抵抗の増加は覚悟が必要になります。 また、ミキシング機能のある送信機も
確実に投げるためには必要となってきます。
今回はムサシノのスカイウォークの主翼を小改造してSAL出来る様にしてみました。



SALのランチイメージです。
助走を省略してもかまいませんが、いきなり
振り上げると翼端に負荷が掛かります。
特に、今回の題材機の様にSAL用に作られ
た機体で無い場合、遠心力による引っ張り
以外の外力をかけない様にしたいものです。


翼端の1ブロックのフイルムを剥がし、
この様にスクラップバルサと1oの
航空ベニヤで補強を入れました。
この補強は、差し込むペグの保持と
翼端ブロックの剥離防止のためだけの
物です。

ペグの刺さっている場所は1oベニヤと
2oバルサのサンドイッチ構造に
なっています。
フイルムを貼り直してペグを固定しました。
ペグに使ったのは直径4o程度の
釣り竿で、少しくらいずれても指から
離れない様に長めにしてみました。

この棒(ペグ)に指をかけて振り回す訳です。
実験機の全容です。
垂直尾翼は大きめな物の、水平尾翼の
面積とモーメントアームはベースの
スカイウォークと同じになっています。


数々の実験に付き合ってくれたこの機体、
あちこち切り刻まれて、まるでブラックジャック
の様.....

これがゴム止め主翼でSALを可能とした
小技。  バルサブロックを両面テープで
貼り付けてあります。 胴体の側板内側
に当たり、ずれを防止します。
投げる時にはこれだけラダーが右に振れる
様にプリセットしてあります。
御覧のFF8では左肩のスイッチAで
ON−OFF出来る様になっています。

やり方は、PMIXの一つを使い、
CH8 −> AIL
SW−A UP
とします。

これでスイッチAを下げると機能がOFFとなり
ラダーがニュートラルになります。


初めて投げてみました!

いつものグランドでクラブ員が見守る中、くるくると回って(目も回った...)デモンストレーション。
翼端が水平に持ち上がって、重さを感じなくなった所でさらに力を入れリリースしてみました。 
初めてなのであまり力を入れませんでしたが左に旋回しながら思った以上に上がります。 
これは行ける! とさらに力を入れてリリースすると.....ナイフエッジ状態ですっ飛んで行きます!

 あわて当て舵を入れて事なきを得ましたが、これでは使えません。

そこで、ラダーをランチ時だけ右にプリセット出来る様にミキシングを入れ、何度も恐い思いをしながら
上の画像の角度でほぼ真っ直ぐ上がっていく様になりました。
ぶぉっ と言った感じの風切り音を残して、私が普通にランチした物より確かに高く上がっています。
しかも、ランチに使った力は体感ですがノーマルの1/3程度に感じました。

半日投げた所で主翼のペグ周りをチェックしましたが、異常ありませんでした。
ペグ方式ですと、遠心力による張力以外の力が掛かりにくいのが良いのかと思いました。



ペグの取り付け位置考

重心位置近くにペグを持ってくると、翼端方面の揚力が大きくなり、
回転中に翼端が持ち上がって来てしまいます。
この現象が顕著に出るために、上反角の大きなラダー機はSALに
不向きと言われていました。
この様に重心位置より後ろに回転の支点を持ってると、横滑り効果から
でしょうか、翼端が上がってきません。
このペグの位置は、上反角により変わってくると思いますので、
場所の選定は実際に持って振り回しながら決めるのが良いと思います。


この考察は[Sailplane Structure]の加納さんが詳しく行っています。
こちらも御覧下さい。
この様な意見もいただきました。
翼端が上がって来る現象は、揚力以外にも重心位置にも関係がある様です。
ラダー機の様に上反角が大きく、重心位置と持つ場所(ペグの位置)の差が
大きい場合、遠心力により一番重い重心位置付近が支持するペグの位置まで
上がってこようとする現象が翼端を持ち上げるのに荷担している様です。
さらに...
回転の最後に急激な加速(力んだりして)を加えると、機体が遅れて
飛び出す方向が外側に向きすぎ、振り戻しでさらに左側に向く傾向が見られます。
加速は全週にわたって行う様にして、最後に力まないのが良いみたいです。


壊して感じたこと

先日、昭和記念公園で行われたHLGの大会での空き時間にデモンストレーションを
行いました。私がデモをした後、SAL投法の第一人者である信太さんに
フルパワーによるランチを試していただいた所、御覧の様に外翼と内翼のつなぎ目で
綺麗に分かれてしまいました。
ペグ周りだけに補強を施しただけの主翼がなぜ遠心力に耐えるのか? 私は上の図の様に考えていました。
振り回すことにより発生した遠心力により、曲がった部分はそこから先の部分の重さにより延ばされようと
しますが、主翼全体が発生する揚力により持ち上げられ相殺されるのでは....と。
ですが、これはペグを柔軟に保持して回した時に限定されることが判りました。
翼端部をしっかりと掴んで固定してしまうと揚力による曲げのストレスを逃がしきれず、
リリースしたとたんに解放され逆方向のストレスが瞬時に掛かる事になります。 
これではひとたまりもありません。

この手の機体でSALをする場合、ペグを柔軟に保持すると言うことが前提となります。
その為には、前項で述べたように適切なペグ位置と無理のない加速が必要になり、練習もそこ当たりが
ポイントとなってくると思います。
壊れても壊れてもゾンビの様に蘇る主翼。 今回は上面に開き防止にカーボンロービングを取り付けました。
私が投げる限りはノープロブレムなんですけどねぇ....パワーの差でしょうか?


スカイウォークの主翼補強例 茨城の根本さん
翼端形状を変更、垂直尾翼面積を増やしたSAL対応スカイウォークです。
外翼と内翼の補強におもしろい事をなさっています。
この画像では判りにくいかも知れませんが、複葉機よろしくケブラー糸で張り線がほどこしてあります。
糸の取り付け部分はケブラーロービングで補強してありバルサに食い込むのを防いでいます。
この機体で翼端を掴むスタイルでのランチをなさるそうです。信太さんのランチにも耐えるそうですよ。

根本さんは肩を痛めてHLGから遠のいていたそうですが、この機体でHLG復活を果たしたそうです。
体に優しいSALならではの効果ですね。

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