F3J日本選手権 覚え書き

2005.11.27〜28に岡山の笠岡で行われたF3J日本選手権と
2006.11.4〜5に上里で行われたF3J日本選手権に参加
して、思ったこと等を踏まえて「F3Jってなに?」をまとめてみました。


F3Jの競技はここから始まる...

F3Jの競技では、上の図の様に人間が機体を引っ張って曳航します。
引き手(ランナー)は2名で左右に分かれて滑車を引きます。 以前は前後に繋
がった引き方も許されていましたが、杭が抜けて飛んできたときの事を考慮して
横に並んで引くようになりました。

F3Jでは作業時間に全く余裕が無いため競技開始の時、曳航のスタートは出来
るだけ素早く行わなければなりません。 作業時間開始と同時にランチャーが機
体を離せるように、予め索にテンションを掛けておきます。
このテンションを掛けるやり方にはいくつかのスタイルがあります。

○ランチャーがギリギリまで後ろに下がって軽めにテンションを掛け、作業時間開
  始数秒前にパイロットの合図でランナーが走り始めます。  ランチャーは作業
  時間開始までテンションに耐え、開始と同時に  リリースするやり方。

○ランナーをランチャーの合図で少し動かしてある程度テンションを掛け、その後
  にランチャーが下がってテンションの調整をします。   作業時間開始数秒前
  にパイロットの合図でランナーが走り始めます。 ランチャーは作業時間開始
  までテンションに耐え、開始と同時にリリースするやり方。

○ランナーをランチャーの合図でランチャーが耐えられるギリギリのテンションので
  下がらせます。 ランナーは作業時間開始と同時に走り初め、同時にランチャー
  は機体をリリースするやり方。

引き手とパイロットとの間は無線等の連絡手段が使えませんので、予めチーム内
でやり方と合図の方法を決めておかないといけません。

ちなみに、上里チームでは1番目の方法を採用しました。 また、パイロットとランナー
との合図には、パイロットの足に蛍光色のカバーを付けその足を上げる事で合図とし
ました。


パイロットからの合図を受けてランナーが走り出すと、最初の10歩ほどは全力で走れ
ます。 その後、機体が風をはらんで立ち上がると急に重くなって、歩く程度にしか引
けなくなります。

この引きの強さは風の強さによって変わります。 5メートル近い向かい風があれば、
ほとんど前に進めなくなりますし、運悪く背風になってしまった場合は、50メートル近く
全力で走らないといけなくなります。

笠岡では曳航レーンの広さの関係で、背風曳航ではエリアの端まで走りきってしまい
ました。

曳航時間は10秒前後ですので頑張って引っ張りましょう。 そのガンバリが獲得高度
に繋がるんですから。

獲得高度と言えば、索の選択も重要です。 索自体の空気抵抗や索の伸びを有効使
うなら細い索を使うのが良いのですが、索が直ぐに伸びきってしまったり、切れ易いな
どの弊害もあります。

ここら辺の索選びは経験が物言うところです。

ちなみに、上里チームは無風〜弱風用として30号、強風用として50号の索を用意し
ました。 
離脱

F3Jでは、F3Bのウインチ曳航と同様にズーム離脱しても、もちろんかまいません。
ですが、時間に厳しいルールですので、確実にサーマルの位置が判っている場合、
例えば近くでトンビがセンタリングしているとか羽虫を追って小鳥が飛んでいるとか
ならば、頂点までもって行かず直ぐに離脱する事も考えに入れておきます。

ズームはF3Bとほぼ同じです。(と思います) ですが、加速は人間が引いている都合
索のテンション以上の加速が望めません。

例えば上里チームがメインで使った30号の索のカタログデータは「直線強度50kg
伸び率26〜30%」となっています。 索の全長は150メートルですので、45メートル
近くは引き延ばしている事になり、その時のテンションはおおよそ50kgと言うことに
なります。

ランナーの足が止まるような状態では、フルに近いテンションが索に掛かっていてると
考えられます。  練習でランナーのテンションを測ったところ、プーリーを介して一人
あたり30〜40kg、二人で60〜80kgですので、40メートル近くの伸びがあるわけ
です。

イメージすると上の図の様な感じです。 物理の実験を思い出しますね。



加速の為のダイブは上のことを頭に入れて行わないと行けません。 長くダイブさせて
いれば、重力加速の分が追加されて確かに降下速度は上がりますが、引き起こして
到達する高度はエネルギー保存の法則に基づいた物から空気抵抗の分だけ少なくな
る計算です。


例え索が40メートル伸びているかといっても、40メートル分ダイブをすれば良いって
ものではありません。 高校の時にやった、ストロボライトとバネと台車を使った実験を
思い出して下さい。 
台車の動きはある程度の所までは加速運動ですが、それ以降は等速運動となって
いましたね。 等速運動域までダイブをさせるのは上の方で書いた通り、不利になり
ますので、ダイブは加速運動中に上昇離脱へ転じるのがベストです。

感覚では、索の収縮が始まって1秒あるか無いかの時間だと思います。 (物理に
詳しい方、計算して教えてください。)


※ 以上の事は、あくまでも木村の「考察」です。 経験も浅いし、物理の成績も普通
   でしたので正しいとは言い切れません。  
   ご指摘、ご意見大歓迎です。


二つの競技を比べてみると
F3B F3J
曳航 ほとんどが電動ウインチにより曳航されます。 
ウインチは使用できるモーターや駆動方式が
ルールで決められています。 

索の長さは片道200Mです。



2名の人間によって曳航されます。 ルールに
より、左右に並んで引かないといけません。
索の長さは150Mです。

予選では全機ほぼ同時に発航して行きます
ので、隣の機体との接触に注意しないと行け
ません。
また、発航が遅れた場合、先に離脱した隣の
チームのパラシュートに絡まってしまう危険も
あります。
機体 シャーレ構造の主翼を持った機体がほとんどです。
ルールによって、全タスクを一機でこなさなければ
なりませんので、ある意味オールラウンドな性能が
求められます。  

また、バラストを搭載した時の最大重量が大きい
ので主翼を丈夫にしてあります。

基本的にはF3B機と変わりません。 機体に
よってはより滞空に特化した翼型を採用した
機体もあります。 

F3B機ほど多くのバラストを積みませんので、
主翼の強度はF3B機ほど高くありませんが、
その分軽量です。 

競技中でも機体の交換が可能なため、コンデ
ィションによって機体を取り替える事もあります。

例えば、リランチでも違う機体を使うことが許さ
れています。
作業時間
と競技
タスクA(滞空) 作業時間12分 競技10分
10分間の滞空と定点着陸です。

タスクB(距離) 作業時間7分  競技4分
4分間の間に、150メートルの仮想面をの間を
何回飛べるか(ラップ出来るか)を競います。

タスクC(速度) 作業時間4分  競技1分位
150メートル間隔の仮想面を2往復(4ラップ)し
たときの時間を競います。

時間には結構余裕があります。
予選
作業時間10分  競技10分

決勝
作業時間15分  競技15分
予選、決勝共に、滞空と定点着陸です。

時間の余裕がまったくありません。






平成18年度F3J日本選手権を振り返って....
懲りずに選手として参加した平成18年度のF3J日本選手権は、2006.11.4,5
地元、上里で開催されました。  去年よりも14名も多くの参加者があり、大盛況の大会
となりました。
普段からF3J機を飛ばしいない木村としては、いつもの定位置的成績でしたが、反省
すべき点は、それこそ膨大にあります。

1.モデル間違いをしてしまった...
ラジコン飛行機を飛ばす者として、”やりがち”ではありますが、決してやってはいけない
ミスを犯してしまいました。

今回も、本番用にGraphite2、予備にXantipaを用意しました。 予選当日の朝、機体
を組んで動作確認をGraphite2、Xantipaの純に行って送信機の電源を切り、送信機
を保管所に預けました。
やはり、緊張していたのでしょう、フライト前に舵の動作確認はちゃんと行いましたが、
モデルネームの確認は怠っていました。 2機とも、舵の効く方向が同じだったので、墜
落などの大事には至りませんでしたが、万が一の事を考えると冷や汗が出ます。

その状態で挑んでしまった第一ラウンドが1000点だったのはどういう事なんでしょう。

2.ランナーとパイロットの掛け持ちを甘く見ていた
平成16年、17年とランナーを経験していたのもあるし、元々がHLGフライヤーですので
息が上がった状態でのフライト自体は問題は無いと思っていました。 ですが、今年は
それ以外の...例えば索の準備など...用務が多かったのを失念していました。
特に大会途中から競技進行の都合、準備時間を5分と制限されてからはテンヤワンヤ、
ダッシュの連続でした。
この後のもろもろの失敗につながってしまいました。

3.個人索を張り忘れた
今回、上里チームでは、索を個人持ちとして、毎ラウンド張り替えを行う方式をとりました。
フライトのすぐ前がランナーだったラウンドで、自分の索を展開する時間が取れず、共用
索を使うことを余儀なくされました。  前のラウンドで走ったレーンには、共用索が2本
あったので、それを使えば...と思っていたのですが、実際私が飛ばすレーンはその隣
のレーンで、共用索は一本だけ、失敗が許されない事態を招いてしまいました。

4.索の展開が間に合わなかった
ランナーの時、そのラウンドで選手が使う索を展開中にボビンに索が絡まり、作業時間の
開始に展開が間に合わなくなってしまいました。 F3Jでは同時発航を行いますので、
出遅れは色々な意味で命取りです。
実際、その後発航に一足遅れて展開が済みましたが、先に上がったレーンの索に乗ら
れてしまい、その索が片づくまで発航が出来ず、選手の方に迷惑を掛けてまいました。

5分の準備時間(前の作業時間終了から次の発航1分前まで)では、索の張り替え時間
としてはギリギリの時間です。 なにせ、150メートルの往復を走ってしないとならないの
です。 息が上がった直後に機体も引かないといけません。
来年もこの方式でやるのなら、索展開は前のグループの空き時間に行うとか、索に色分
け等をして判るようにした上で、複数本事前に張っておくなどの工夫が必要でしょう。

5.バイトのランナーへの周知が足りなかった
今回は、専属ランナーとして活きの良い高校生のアルバイトを雇いました。 走り方や索
の回収、リランチなどのレクチャーは徹底したつもりでしたが、それ以外のシチュエーション
を...例えば脱索や索切れ、索絡まりなど...を教えていませんでした。

実際起こった索絡まりのシーンでは、バイトの高校生に不安な思いをさせてしまいました。

6.ビビリ癖が出た
サーマル旋回中や上空でのビビリ癖は随分直ったと自分では思っていましたが、今回は
着陸進入で他の機体と交錯した時に道を譲ってしまい、定点や時間の調整が上手くいか
なくなったケースがありました。

遠慮があるのか、気が小さいだけなのかは不明ですが、他の機体を良く見る癖をつけて
自分のルートは死守するように心がけするつもりです。


上位入賞を果たしたチームを見てみると....
索をランチ毎に取り替えていた。

曳航索は出来るだけ細い物を使うのが高いランチの秘訣でもありますが、細い曳航索
はその分「切れやすい」また「伸びやすい」という欠点も持ち合わせています。
ですので、曳航索の性能のおいしいところを使うためには、耐えず新しい物を使うに
限ります。
上里のチームでは、各ラウンド1本(5回使用)する様に曳航索を準備しましたが、上位
チームでは、一回ランチする毎に索を回収して新しい索を張り直していました。

F3Jで使う索は、F3B用の物を流用します。 ですが、F3B用の曳航索のほとんどが
400メートル巻きであるため、F3J用に150メートルずつ切ると確実に100メートルと
言う「半端」が出てしまいます。 大変不経済ではありますが、その索をバンバン使え
る経済力もチームには必要...と言うわけですね。
専属のランナーを揃えていた。

F3Jは人間が引っ張って機体を曳航するわけで、引っ張る方(ランナー)はかなりの体
力を消耗します。 日本選手権では6ラウンドで戦われる訳ですので、例えば4人の最
小編成チームで全員が選手で順番に役目をこなす場合、1ラウンドで2回、予選だけで
一人12回のランナーをこなさないとなりません。  最後の方はへろへろです。

ここに、専属ランナーが一人でもいれば、一回休みが出来て少しでも体力の回復が
出来ます。 更にランナーを全て専属に任せれば、パイロットは操縦に専念出来ます。

上里チームは5人編成+助っ人1名の6人編成でしたが、それでも最後は足腰に来て
駐機場とフライトエリアの移動に支障が出るほどでした。 出来ることならもう数人助っ
人を増やしたい所ではありますが、資金が....。
風の強さなどのコンディションに合わせた機体を用意していた。

F3Jでは機体の変更がラウンド内でも可能です。 ですので、色々な特性の機体を用
意する事ができます。  F3Jとして開発された機体を軸に強風用にF3B機を揃えるの
が今まで一般的でした。  ここ数年で、更に軽量なリブ組機が出て、F3J機でも手こ
ずる様な渋いコンディションにも対応出来る事が判りました。

強風用にF3B機、通常用にコラドやGraphite2のようなF3J機、曇天無風の様な渋い
コンディション用のAVAやGraphiteの3機体制で臨むのが最良みたいです。

実際、2005年のF3J日本選手権では、2日とも渋いコンディションが続きましたが、
そんな中光ったのは優勝した坂井選手の「アバファイト」や二位に入った垰森選手の
「トパーズ」で、両方とも軽量なリブ組機でした。
決勝では「リランチ」を有効に使っていた。

予選では時間的余裕が全く無いのでリランチはよっぽどの事が無い限りしないのです
が、決勝では予選より5分作業時間が長く、気分的な余裕があります。
2〜3分飛ばした感触で一旦降ろしてリランチするのを有効な手段として使っていました。
また、直ぐに発航させないで様子見をする作戦を取ったチームもありました。

おまけ
サーマルは秘密にする。

これは木村が体験したことですが、渋いコンディションの中、一人違う方へ足を延ばした
木村の機体が偶然、サーマルにヒットしました。 他の機体が大回りで回遊する中、一機
でクルクルとセンタリング。 当然それを見つけたたの選手の助手は機体を木村の機体
の方へ誘導し、あっと言うも間に芋洗いになってしまいました。  殺到する機体にびびっ
た木村はその場をあけわたし、あえなく撃沈したのでした。

こういった場合、センタリングするのではなく、そこを突っ切るように往復して他の選手に
サーマルがあることを悟られないようにするのもテクニックの一つ...
と教えていただきました。


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